スリラー







昨年末、児童に対する虐待であの世界的大スター、マイケルジャクソン氏が
逮捕されたというニュースが世界を駆け抜けた。故ケネディー大統領の
暗殺事件などがあるアメリカのことなので 当局の発表を総べて鵜呑みに
するのも危険だと思うが「煙りの立たない、、、」という言葉もあるので
まー、勘違いさせるだけの何かがあったことだけは確かだろう。
 さて、そんなこんなで僕の興味は事件そのものというより 事件によって
取りざたされた一枚の写真に移ってしまった。スポーツ紙の一面を飾る
彼の顔写真がそれである。
 黒人なのに白い肌。顎のまん中には溝が彫られ、つぶらな瞳に二重まぶた。
尖った鼻等々。
 確かに個人々々には個々にどこかしらコンプレックスはあってしかるべきだが
自分の原形をとどめないほどの強いコンプレックスっていったい何なんだろう?
自分で自分を完全に否定したということか?
 人格を形成する過程において 環境は絶大な影響をその人に与えているはずで
だとすると 何が彼にそこまでのプレッシャーを与えたのだろう?
幼くしてスターダムにのし上がった彼に対する嫉妬は相当のものだったことは
想像に難くない。 それにしてもやはりあの白い肌を見るにつけ黒人に対する偏見や
差別が相当に根強いことがうかがえる。白人はそんなに偉いのか?
我々一般市民には想像を絶するほどの強い圧力だったに違いない。故に事件は事件
で冷静に受け止めるとしても 彼に与えられた運命に対し強く悲哀を感じるのである。

時を同じくして日本でも同様の事件が起った。
場所は熊本。情緒ある温泉街として近年その名を全国的に知らしめている「黒川温泉」である。
もちろんこの温泉郷全体がそうではない。その中の心無い一旅館が舞台だ。
差別のため故郷に帰ることもままならなかったハンセン病の患者に対して
故里の空気を少しでも感じてもらおうという遅すぎた自治体のそれでも心ばかりの
対応に対して旅館側は「ノー」を突き付けた。
ハンセン病という病気の患者に対する不当な差別はもはや犯罪である。
治療を施すとの名目で隔離政策を施しその風土を助長した国も同罪だ。
被害者達は長年言われなき差別に耐え 家族との面会もままならなかったと聞く。
愛すべき家族との愛すべき貴重な時間を奪った環境は 彼等に対して何の保証も
していない。その象徴がこれだ。
いや、象徴というにはひどすぎる対応だ。

これを読んでいる我々もおそらく対岸の火事のような人事であってはならないと思う。
うわべでは「それはやっちゃいかんでしょう」と思っていても
いざ自分が同じ状況に立たされたら素直に「イエス」と言える自信は無かろう。
いつもは心の奥底にねじ伏せている邪悪な悪魔が時として頭をもたげるのだ。

差別はやっちゃいかんよ。分かってはいるものの、人間の心のどこかには
自分より弱い者を見つけたらいじめてしまうという習性はあるでしょう。
それでしか自分のポジションを見出せない寂しい人だっているでしょう?

でも、それはやっちゃいかんよ。
もし自分がそうだったと想像してごらんなさい。
きっと耐えられないよ。
罪深き自分の中にある邪悪な心を手なずけてこそ本当の尊敬されるべき
人間へと昇華できるのではないか?

そんなことをかつて「スリラー」を唱ったアーティストを見て
思ったのでした。





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